【沼津御用邸】（静岡県沼津市　旧国名：駿河）

＜駿河湾と富士を望む白砂青松の景勝地　時代と風土を反映した圧巻の様式美です＞ 駿河湾の入り江の奥深く、愛鷹（あしたか）、箱根などの山嶺を後背に古くから発展を遂げてきた沼津。東海道と伊豆半島の結節点にも立地することから、交通の要地として時代ごとの為政者に重んじられ、今日においても静岡県下第３の規模の人口を抱える都市です。歴史を顧みてもその存在は際立っており、小田原北条氏の祖となった伊勢宗瑞（いせ　そうずい　？～1519　現在北条早雲の名で知られる人物）や、臨済禅中興の祖である白隠慧鶴（はくいん　えかく　1686～1769）、さらには爛熟した化政文化の全盛期に君臨した老中水野忠成（みずの　ただあきら　1763～1834）など、所縁の人物は枚挙に暇がありません。近世までは城下町あるいは宿場町の性格が色濃かった沼津ですが、近代に入るとその温暖な気候と美しい風景が保養地として注目を集め、政財界の要人の別邸が林立するようになりました。 沼津における別邸群は旧城下を南へ抜けた海浜に沿うように建てられ、陽光にきらめく白砂と蒼然たる松の枝ぶりを基調に、駿河湾そして富士山を望む好適地が選ばれました。1889年に東海道本線が開通すると、東京から至便であることからいっそう存在感を強めます。ついに1893年には、大正天皇（1879～1926）の静養を目的とする御用邸を造営。1,200平方メートルにもおよぶ、皇室ゆかりの広大な邸宅が出現したことで、沼津の名と格は一挙に高まることとなりました。御用邸はたびたび増築され、その規模はみるみる拡張していきましたが、なかでも特筆されるのは1905年の西付属邸の設置です。これは、かねてより同地に別邸を構えていた伯爵川村純義（かわむら　すみよし　1836～1904）邸の一部を政府が買い取って建造したもので、皇孫（後の昭和天皇）の御用邸として新築されました。川村は薩摩藩出身の海軍軍人で、西郷隆盛の近親にもあたります。戊辰戦争で戦功をあげ、明治政府では海軍の草創期を牽引した実力者です。その廉直な人柄から明治天皇から篤い信頼を寄せられ、夫人をはじめとする家庭内の関係性も良好であったことから、皇孫の養育という大役を担うことになりました。川村は昭和天皇を生誕の翌年から沼津へ迎え養育を施します。川村自身はその3年後に病死したため、昭和天皇を傅育したのはわずかな期間でしたが、昭和天皇はこの幼少期の記憶を懐かしみ、即位後も旧川村邸である西付属邸へ頻繁に足を運んだといいます。 太平洋戦争時の本邸焼失などを経て、1969年に御用邸としての役割を終えた邸宅は、現在“沼津御用邸記念公園”として国の名勝に指定され、一般市民にも広く門戸を開いています。幸いにして西付属邸は焼損を免れ、昭和天皇が滞在していた当時のままに保存、公開されています。和風様式の格調高い建築でありながら、邸内にはビリヤード台などが設けられ、調度品にも西洋由来のものが多く、まさしく和洋折衷の名建築です。わけても家具については最高峰の技術が施された希少な作例が多く、日本住宅の研究的観点からも言及されることがしばしば。主の姿こそ見えないものの、現存する家具や調度品からその面影を偲ぶことは十分に可能で、松の枝を透かして斜から注ぎ込む陽光の温かさ、柔らかさが、いっそう邸宅の洗練されたデザインを際立たせます。邸宅の見学を終え、特徴的な垣根に沿って屋外の散策路を行けば、右手に望むのは秀麗な富士山。砂浜に響く潮騒も心地よく、多くの人士が時代を超えて、この地に安らぎを求めた理由を存分に体感できるのです。 ひとり旅おすすめ度：★★★（人はそれなりにいるが、広い場所なので気にならない） 探訪日：2月第2週土曜16時ごろ アクセス：沼津駅よりバスで15分ほど #沼津 #沼津御用邸 #静岡旅行 #静岡観光 #静岡県観光 #しずおか元気旅 #沼津市 #numa_1 #国内旅行好き #国内旅行好きと繋がりたい #建築好き #建築巡り #御用邸 #和風建築 #日本建築 #近代建築 #名建築 #木造建築 #数寄屋建築 #和洋折衷 #川村純義 #別荘 #駿河湾 #白砂青松 #歴史好き #ひとり旅 #旅のある暮らし